肉体には自信があった。
体育教師となった今も、暇を見つけては学校のトレーニング設備を利用し
学生時代に培った筋肉を維持していた。
しかしそれは、あくまで競技用としての意味合いだ。
部分的に肥大し、”マッチョ”というよりは”筋肉ダルマ”と評される事の多い
己の肉体が、俗にいうボディビルダーのような均整の取れた”魅せる筋肉”とは
程遠いものであることは充分自覚しているつもりだ。
ましてや筋肉の流れや理解に繋がる為の教材としては
不適切といわざるを得ない。
それでも、美術部の”デッサンモデル”の依頼を受けたのは
やはり理由は何であれ、衆目にこの肉体を誇示したいという欲求が
あったからなのだろう。
少なくとも、前日に全身の体毛を処理をする程度には、
俺はその日を楽しみにしていた。